ほおずき(鬼灯)

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お盆。

  胡瓜のお馬に跨がり、ご先祖様の精霊が現世に戻ってきます。道標は、迎え火の煙に盆提灯、最後に精霊棚に飾った小さなほおずき。そして、体のないご先祖様は、ほおずきの室の中でお盆の間はお過ごしになるのだとか。​

 

ほおずきが盆飾りとなったのは、観音様の功徳日(7月10日)に開かれるほおずき市が、かつての盆(旧暦の7月15日)に近かったからだと言われています。今では浅草寺の青ほおずき市が有名ですが、発祥は『功徳日に青ほおずきの実を愛宕の神前で鵜呑みにすれば、大人は癪の種を切り、子供は虫の気を封ずる』との風説に基づいて市を始めた、愛宕神社であるとされています。

​  愛宕神社のもう一つ欠かせない逸話が『出世の石段』​にまつわるものです​​。三代将軍徳川家光が、菩提寺増上寺参拝の帰りに、​愛宕​山​の​山頂に咲く​​源平の​梅を所望し​たところ​、四国丸亀藩の家臣曲垣平九郎​​が馬にて急勾配を駆上り、これを献上しました。無名であった平九郎は、将軍の「泰平の世に馬術の稽古怠りなきこと、まことにあっぱれである」との言葉から、全国一の馬術の名手として名を馳せることとなり、『出世の石段』の故事が誕生したのでした。

​  勤勉さを尊び、​日夜研鑽を積むことを重んじた、製作者の精神がぎゅっとつまった小さな手まり。これを、ほおずきに込めて、今回の展覧会の道標としようと思います。